カケル「先生、高校化学の未定係数法って、どうしてあんなに複雑な計算が必要なんですか?なんか、すごく面倒くさくて…、係数を適当に決めても、なんとなく合いそうな気もするんですけど…」
テイス「カケルさん、未定係数法に対する率直な感想、ありがとうございます。確かに、一見すると複雑で面倒に感じますよね。ですが、その複雑さには、化学反応を正確に理解するための重要な理由が隠されているんです。まず、カケルさんの「適当に決めても合いそう」という感覚ですが、これは、化学反応における最も基本的な原則を理解する上で非常に重要な視点です。そこで、まずは、未定係数法がどのような原理に基づいているのか、そして、なぜ適当な係数ではダメなのかを一緒に考えていきましょう。ところで、カケルさんは、化学反応式とはどのような意味を表しているか、説明できますか?」
カケル「えっと、化学反応式って、反応する物質と生成する物質を、化学式で表したもので…、その物質の量を表す係数が、確か、分子の個数とか、モルの比を表しているんですよね?…うーん、でも、やっぱり係数を適当に決めちゃいけない理由が、まだピンと来ないです。」
テイス「素晴らしいですね、カケルさん。化学反応式の基本的な意味をしっかりと理解しています。その通り、係数は分子の個数やモル数の比を表していて、化学反応式は、質量保存の法則と、物質を構成する原子の種類と数が反応の前後で変化しないという原則に基づいて成立しています。もし、係数を適当に決めてしまうと、この原則が崩れてしまい、化学反応を正しく表すことができなくなってしまうんです。例えば、簡単な例として、水素と酸素が反応して水ができる反応を見てみましょう。
H₂ + O₂ → H₂O
この反応式を、もし係数を考えずにこのように書いた場合、水素原子は左右で2個で同じですが、酸素原子は左辺に2個、右辺に1個で数が合いませんね。これは、質量保存の法則に反していることになります。では、この反応式の係数を決めるために、カケルさんならどのようなアプローチを試みますか?どのようにすれば、左右の原子の数が一致するでしょうか?」
カケル「えっと…、酸素原子の数を合わせるために、右辺のH₂Oの前に2をつけると、H₂ + O₂ → 2H₂O になりますよね。そうすると、今度は水素原子の数が合わなくなっちゃうから、左辺のH₂の前に2をつけて、2H₂ + O₂ → 2H₂O。これで、全部の原子の数が揃いました!…あれ?もしかして、これが未定係数法の考え方と一緒なんですか?」
テイス「素晴らしい!カケルさん、見事に未定係数法の基本的な考え方を理解しましたね。まさに、左右の原子の数を合わせるという考え方が、未定係数法の根幹です。未定係数法は、複雑な化学反応式において、一つずつ係数を調整していくのが難しい時に、未知の係数を文字でおいて連立方程式を立てることで、機械的に係数を求める手法です。ですが、その根底にある考え方は、カケルさんが今示したように、質量保存の法則と、原子の種類と数が反応の前後で変化しない、という、とてもシンプルな原則なのです。では、なぜ、そのような面倒な連立方程式を立てる必要があるのでしょうか?例えば、以下の反応式はどうでしょう?
a C₃H₈ + b O₂ → c CO₂ + d H₂O
この反応式の係数を、先ほどのように、原子の数を数えて調整していくことはできますか?(少し難易度を上げて、思考力を刺激する)」
カケル「うーん、さっきみたいに、簡単にはいかないですね…。炭素原子の数を合わせようとすると、水素原子の数が合わなくなるし、その逆も然り…、それに、酸素原子も、CO₂とH₂Oの両方にあるから、すごくややこしいです。…やっぱり、こういう複雑な反応式では、未定係数法が必要なんだな、って納得しました。でも、連立方程式を解くのが、やっぱりちょっと苦手です…。」
テイス「カケルさん、その気持ち、とてもよくわかります。複雑な連立方程式を解くのは、確かに時間がかかるし、ミスも起こりやすいですよね。ですが、連立方程式を解くプロセスは、論理的な思考力を鍛える上で、非常に有効なトレーニングになります。そして、実は、連立方程式を解く上でも、いくつかのコツがあるんです。例えば、まずは、最も複雑な分子の係数を1と仮定して計算を進めると、計算がスムーズになることがあります。また、方程式を立てる際には、各原子ごとに式を立てるのではなく、特定の原子の数が左右で一致する式を複数立てていくと、連立方程式が解きやすくなる場合があります。このコツを理解しておくと、未定係数法の問題に対するアプローチが格段に効率的になります。では、先ほどのC₃H₈の反応式で、実際に連立方程式を立てて、係数を求めてみましょう。カケルさんが、実際に手を動かしてみましょうか?(問題解決能力を開発する)」
カケル「はい!やってみます!えっと…、C₃H₈の係数をa、O₂の係数をb、CO₂の係数をc、H₂Oの係数をdと置くと…、まず、炭素原子について、3a=c、水素原子について、8a=2d、酸素原子については、2b=2c+d。うーん、3つの式しかなくて、4つの未知数があるから、解けない?…あ!先生が言っていたみたいに、一番複雑なC₃H₈の係数を1って仮定すればいいんですね!そうすると、a=1だから、c=3、d=4。これを酸素の式に代入すると、2b=6+4。つまり、b=5。係数は1, 5, 3, 4になりますね!できました!…あれ?もしかして、連立方程式も、そんなに難しくないかも…」
テイス「素晴らしいですね、カケルさん!連立方程式を解くコツを掴んで、見事に正解しました!未定係数法は、化学反応を理解するための強力なツールであり、単に機械的に計算するだけでなく、その根底にある質量保存の法則を理解することが大切です。そして、連立方程式を解くプロセスは、論理的思考力を養うための良い訓練になります。最後に、今回の講義内容を、カケルさんの言葉で簡単にまとめてみて下さい。それによって、今日の学びがより確かなものになるはずです。(学習の定着と動機付け)」
カケル「はい!今日の講義で、未定係数法は、化学反応式を正しく表すための、とても重要な方法だということが分かりました。適当に係数を決めてはいけない理由は、原子の種類と数が反応の前後で変わらないという質量保存の法則を守るためなんですね。連立方程式はちょっと面倒だけど、コツを掴めば、結構簡単に解けることも分かりました。それに、論理的な思考を鍛えることもできるんですね。これからは、未定係数法をもっと積極的に使って、化学反応を深く理解できるようになりたいです!」