カケル「先生、日本国憲法の三大原則ってあるじゃないですか。国民主権、基本的人権の尊重、平和主義…あれって、それぞれ何がどう違うのか、いまいちピンとこないんです。全部、なんか良いこと言ってるなって感じはするんですけど…」

テイス「カケルさん、素晴らしい着眼点ですね。確かに、三大原則は抽象的な表現が多いので、それぞれの違いを理解するのは難しいかもしれません。しかし、それぞれの原則は、日本国憲法の根幹を成す重要な柱であり、相互に深く関連し合っています。まず、カケルさんがそれぞれの原則について、どのようなイメージを持っているか教えていただけますか？ 例えば、国民主権とはどのような状態を指すと思いますか？」

カケル「えっと…国民主権って、国民が一番偉いってことですよね？ だから、選挙で誰を代表にするかとか、法律をどうするかとかを決める権利がある、みたいな…？ でも、正直、学校の授業で聞いたことをそのまま言ってるだけって感じです。本当に自分が国を動かしている実感は、全然ないですし…」

テイス「なるほど、良いですね。カケルさんの言う通り、国民主権は、国の政治のあり方を最終的に決める権利が国民にある、という原則です。選挙はその最も代表的な例ですね。しかし、カケルさんの言うように、日常生活で常に国を動かしている実感を持つのは難しいかもしれません。そこで重要なのは、『代表』を通じて間接的に意思を反映しているということです。カケルさんのように、疑問を感じることは、非常に大切な第一歩ですよ。次に、基本的人権の尊重について、どのようなイメージをお持ちですか？」

カケル「基本的人権の尊重は…みんな平等で、自由ってことですか？ なんか、当たり前すぎて、逆に難しいです。自由に何かをするって言われても、別に何も思いつかないですし。権利って言われても、何が権利なのかもよくわからないし…」

テイス「カケルさん、基本的人権は、まさに**『当たり前』として存在しているからこそ、意識しにくいかもしれません。しかし、これらは人間が人間として生きていく上で、誰しもが当然に持っている権利**であり、社会がそれを守る義務を負っています。たとえば、カケルさんが自由に発言できるのは、表現の自由という基本的人権があるからです。また、不当な理由で差別されないのは、平等権という基本的人権があるからですね。これらの権利は、国が勝手に奪ったり、制限したりできない、最も大切な権利です。では、最後の平和主義についてはどうでしょう？」

カケル「平和主義は…戦争はしないってこと、ですよね。なんか、これも当たり前すぎて…。でも、ニュースとか見ると、世界では戦争とか紛争とかいっぱいあるし、日本だけが戦争しないって言ってても、どうなんだろう？って思っちゃいます。」

テイス「カケルさん、非常に鋭い指摘ですね。平和主義は、単に戦争をしないということだけではありません。日本国憲法における平和主義は、武力による国際紛争の解決を永久に放棄し、平和的な外交交渉を通じて、世界の平和に貢献していくという、より積極的な姿勢を求めています。つまり、日本は、自衛のための必要最小限度の実力組織は保持しますが、他国を攻撃するための戦力は持たない、ということです。カケルさんのように、現実の国際情勢と比較して疑問を持つことは、より深く平和主義の本質を理解するための重要な視点です。さて、ここで少し問題です。日本国憲法は、なぜ、これら三つの原則を最も重要だと考えたのでしょうか？ その歴史的な背景をふまえて、考えてみましょう。」

カケル「えっ、歴史的な背景ですか？　うーん…　第二次世界大戦で日本が負けて、反省したから、とかですか？ なんか、教科書にそう書いてあったような気が…」

テイス「カケルさん、それは、非常に重要なポイントです。まさに、第二次世界大戦での反省が、日本国憲法が誕生する大きなきっかけとなりました。しかし、単に反省しただけではありません。戦前の日本が、国民主権をないがしろにし、基本的人権を軽視し、侵略戦争へと突き進んだという、深い歴史的教訓を踏まえた上で、二度と同じ過ちを繰り返さないために、これら三原則を最も重要な柱として据えたのです。つまり、三つの原則は、単独で存在するのではなく、互いに深く関連しあい、平和で民主的な国家を築くための土台となっているのです。例えば、国民主権がなければ、国民の自由や権利が守られない可能性がありますし、平和主義がなければ、人々の生命や財産が脅かされる可能性があります。この関連性を意識することで、より深く憲法の本質を理解することができます。さて、ここからは少し発展的な内容に移りましょう。もし、これらの原則が一つでも欠けてしまったら、どのような問題が起こりうるでしょうか？」